アークノヴァとは、アクションのボトルネックを解消するゲームである・・と言っても過言ではないくらい、重要な概念。
アークノヴァは「カード,建設,動物,後援者,協会」の5つのアクションが循環するシステムのため、何か特定のアクションを打ちまくることは一般に困難である。よって、さまざまなアクションをバランスよく打ちながら拡大再生産を進めることが重要になってくる。
しかしながら、運要素やインタラクションが絡んだゲームである以上、常に完璧にバランスの取れた状態を維持するのは難しい。展開によっては特定の資源が不足したり、もっとこのアクションたくさん打ちたいな・・と思うようなこともあると思う。これはその部分がボトルネックになっていて、拡大再生産が停滞している状態であると言える。
そのようなとき、もしくはそうなる前にどこがボトルネックになるかを予測し、補うような動き方をすれば、非効率な手の発生を防いでゲームを有利に進められるようになる。ここではその、ボトルネックについて考えるためのベースとなる分類について述べる。どのような要素があるのかを論理的にイメージできていれば、実戦の中でも考えやすくなると思うので参考にしていただければ幸い。
まずはメインの動物について。
動物は訴求点を得る主な手段であり、最も一般的な得点源。
アークノヴァにおける動物のしくみは次のようになっている。
まとめると、「お金,囲い地,動物カード」の3つの要素があり、
この3要素のどれが不足しても、動物は飼えずにうまく回らなくなる。
以下に、それぞれのボトルネック解消手段をまとめておく。展開に応じてうまく対処していけるとよいと思う。
この中で最も柔軟に戦術を選べるのは後援者アクションの改良なので、お金がボトルネックになりそうなときは後援者アクションを早めに改良するプランを視野に入れておく。(もちろん他と比較してそれがベストかどうかはケースバイケースだが。)
何かしらの手は打たないと回らないと思われる。
動物以外に後援者や保全計画のカードもあるので、ドローする場合は必ずしも動物カードを引けるとは限らないことに注意。また、序盤に出せないような重い動物を引いてきてしまうこともある。
動物アクション自体のボトルネックについても補足しておく。
上記に挙げた「お金,囲い地,動物カード」が十分であっても、動物カードを出すアクション能力自体が追いつかないことがある。これは主に、拡大再生産が進んだあとの終盤に発生する現象である。
この状態を打開するには、一般に動物アクションを改良する必要がある。動物がⅡ面になれば3のスロットでも動物を2枚出せるようになるためハイペースで打ち続けることができ、アクション能力がボトルネックになる恐れはほぼなくなる。
後援者アクションでは休憩してお金を得ることもできるので、打てる後援者カードのない状態が必ずしも悪いわけではないが、後援者アクションが右側に移動してくるタイミングで強い後援者を打てる状態になっていると有利である。
後援者アクションを改良していれば10金得られるのでそこまで気にしなくてよい(実際10金は強い)と思うが、改良せずに進めるストラテジーのときは、それなりに後援者を手札に蓄えることを意識するとよいと思われる。(ただし、状況にそぐわない弱い後援者を出してしまわないように注意。)
逆に、打ちたい後援者がたくさんあるけどアクションが追いつかないとき。このようなケースの多くは何かしら諦めるか後回しにすべきだが、お金を支払って後援者を出せるボーナス(マップなどにある)を利用するとすべて出せて通常とは違う動きができる場合があるので、頭の片隅に入れておくとよい。
協会アクションについては、何よりも保全計画の得点効率が良いので、保全計画とそれ以外も含めた全体を分けて考える。動物で稼ぐのが訴求点側のメインなら、保全計画は保全点側のメインで動物と並ぶ重要な得点源。
保全計画は拡大再生産が順調なら(4人戦では)終盤に向けて一気に受け皿が増えてくる特徴があると思うので、X-トークンを使ってでもたくさん踏みたい過剰の状態になることが多いと思われる。
逆に序盤から中盤にかけての受け皿は少なく、うまいこと確保できるとワーカーを増やしたり、早めに嚙みつきや2マス囲い地などの収入を解放できたりして、ゲームを有利に進められる場合がある。
受け皿の確保手段は、以下のように比較的シンプル。
序盤から中盤にかけて重要な協会アクションに、提携動物園や大学の獲得がある。特にそれぞれ2つ目を獲得したときにアクションカードを改良できる効果が大きいため、序~中盤は必ずしも保全計画を打てないからといって、協会アクションがだぶつくことはない。(ただし、大学は展開によっては必要ない場合もあるので注意。実際、大学を取る手を保全計画に回して得点を積み重ねていければ一番速い。)
むしろ、ワーカーが1つしかないのがボトルネックなので、保全計画達成時のキューブや2保全点のボーナスで早めにワーカーを2つにできると動きやすくなる。
X-トークンのメリットはいくつかあるが、ボトルネックに関しては以下のアクションで使うと解消するためのエンジンになる。
機敏(任意のアクションカードを1のスロットに移動できる)の効果は、ボトルネックとは逆にある特定のアクションが過剰になってしまって打つ必要のないときに有効である。終盤にカードなどの得点に寄与しないアクションをこれで葬れると、手数を圧縮できる。
アークノヴァではアクションカードの改良機会は最大4回あり、改良することでアクションが強化されたり不可能なことが可能になったりするので、どのアクションカードをどのタイミング(順序)で改良するかはゲームの進行上とても重要である。序盤に一つ間違えただけでも、逆転不可能な差を生んでしまうこともあるくらい。
ボトルネックの項でもその解消手段の1つとして挙げているが、ここではアクションカードの改良に関わる考え方や、ゲーム内での計画の仕方について中心的に述べる。
※ 現物のアクションカードは改良前後の内容が両面に印刷されているため、改良することをしばしば「裏返す」と言うこともあるが、ここでの表現は「改良」で統一する。
まず、5種類それぞれのアクションカードを改良することで、どのようなメリットがあるかについて整理する。
アクションカードの改良順序やタイミングは戦略によってさまざまなので、個々のメリットを頭に入れておくことでより正しい判断がしやすくなると思う。
[1.i]: 序盤において特に強力な効果(建設をベースにする考え方の項を参照)。
[1.ii]: 動物で訴求点を上げようと思うと1訴求点あたり3金弱かかるため、2金で1訴求点上げられるのは効率が良い。
[1.iii]: 小型動物は序盤でも出しやすいので、[1.i] と同様に序盤に噛み合っている。
[2]: 基本保全計画に爬虫類や鳥類があるときに特に活きる。
[3]: 建設がしやすくなると同時に、最終的にマップ埋めきりで7訴求点を狙えるようになる。
まとめ: 序盤から終盤まで、多くの種類のメリットを享受できる。
[1]: 序盤から中盤にかけては保全点5、保全点8のボーナス獲得が容易になり、終盤は余ったお金を(余るなら)得点に換えられる。真っ先に改良して2金でお手軽1保全点はおいしい。5金でもまだおいしい。7金で動物と同じくらいの得点効率。10金以上の寄付は、お金が余っているとき以外は行なわないほうがよい。
[2]: 提携動物園の重要度はマップや展開によっても異なるが、一般的に3つ目の提携動物園でワーカーを取れるのはおいしい。屋外区域では戦略上ほぼ必須。他、4つ目の提携動物園で2保全点を得られる展望塔と園内レストラン、3つ目のワーカーで2保全点を得られる研究機関とアイスクリーム屋で優先度が高め。反対に、3つ目のワーカーで保全点を得られず、2保全点が大学のほうに付いているシルバー湖では優先度が低い。
[3]: 協会絡みの戦略が幅広い屋外区域を除き、主に終盤の得点ラッシュに活きると思われる(保全計画+提携動物園や大学完遂時の保全点、評判による保全点や訴求点のボーナスなど)。それ以外は、強さ5で提携動物園と2評判の獲得を同時に行なえるのがややおいしい。
[4]: 有効なこともあるが、狙ってこの効果を活かせる場面は少ないと思われる。
まとめ: 序盤は寄付による保全点5と8のボーナス到達、中盤は3つ目の提携動物園とワーカー獲得、終盤は寄付による得点のひと押し・・と、幅広いタイミングでメリットがある。
[1]: 評判5のアクションカード改良、および評判8のワーカー獲得ボーナスに向けて加速できる。手軽に評判を得る手段としては唯一であり、貴重なもの(他は特定のカードをプレイするか、ワーカーが必要)。
[2]: 特にお金が潤沢になる終盤において、動物をハイペースで出し続けられるようになる。
[3]: 追加コストはかかるが、動物カードのボトルネック解消、およびカードを取る手数を節約できる。
[4]: サイやワシなどⅡ面アイコンを持つ動物には強力なものが多く、中盤から終盤にかけて活きてくる。
まとめ: 中盤以降のメリットがメインで、後々のことを考えて改良することになる。
[1]: 1アクションで(強さ5で打って)10金もらえるのは強く、収入タイミングを待たずに即時でお金が手に入るため拡大再生産に活かしやすい。ただし、休憩が速い場ではお金を使いきる前に次の収入が入ってきて余る流れになることも。
[2]: 強い後援者カードを直接プレイできるとおいしいが、評判の範囲に下りてくる前に噛みつきなどで取られてしまうことも多く、この効果を狙って活かすのはなかなか難しい。また、休憩してお金をもらう場合と比べて、わざわざ追加コストを支払ってまでプレイする利のある状況は限られている。あくまで流れ次第で、タイミングよく活かせたら活かすくらいに構えておくのがよいと思う。
[3]: 手数効率を上げて後援者中心の戦術を取りやすくなるが、[2] に同じく強い状況は限られていると思う。たいていX-トークンが必要になるので、その価値を天秤にかけて判断することになる。
[4]: 後援者カード64枚(BGA限定カードは除く)中、Ⅱ面アイコンを持つものは6枚しかなく効果は限定的だが、動物とは違って序盤に出したいカードもいくつかある(探検家,基礎研究など)ため、それらが手札に来たときは早期改良の選択肢が生まれる。
まとめ: 計画に関わるメリットは、お金とⅡ面アイコンの後援者くらい。
[1]: 強いカードは長く場に残らないことも多いので、欲しいカードを拾えるかどうかは状況次第。直近の計画はできても、後々の事まで考えて何かを予定するのは難しい。漠然と運の絡むメリットに期待することになる。
[2]: 中盤以降はカードアクションを繰り返していると手札は余り気味になるので、メリットは限定的。良いカードを多少引き込みやすくなる程度。商業港なら無駄にならないのでよい(アクションのたびに3金プラスになるイメージ)。
[3]: 噛みつくタイミングを選びやすいのは利点だが、そもそも評判の範囲内からなら複数枚取れるので、恩恵を受けるケースは少ないと思う。
[4]: この効果がおそらくメインで、自然な流れで2保全点得られるならおいしい。ただし、ゲーム展開が速いとそこまで評判が上がる前にゲームが終わってしまうことも多く、見極めが必要。また、評判は(強さ2の協会仕事を多用するなどして)無理して上げても弱いので注意。
まとめ: 評判が10以上に上がりそうなら改良する。
アクションカードは以下の4つのタイミングで改良できる。
戦略によって、これらの改良がいつ頃になるのかを考えてみる。
最初は1~2ラウンドにかけて提携動物園か大学を続けて取り、[1] か [2] でアクションカードを改良するのが定石なので、2ラウンドには1枚改良できる。配置ボーナスが使える屋外区域や研究機関なら、1ラウンド中に改良できることもある。
行かなかったもう片方は、(3~4ラウンドに行くことになるので)通常は4ラウンドになる。一般に5~6ラウンドでゲームは終了するので、これはもう中盤を過ぎたくらいのタイミングであり、かなり遅い。保全点5や保全点8到達時のボーナスで提携動物園や大学を取れたり、屋外区域や研究機関のときは3ラウンドに改良することも可能。3ラウンドならまだ先は長いので、この1ラウンドの差は改良の計画にも影響を与える。
[3] の保全点2は、初回の保全計画によって到達するのが一般的。野生復帰などで1ラウンドに行ける場合もあるが、2ラウンドに大陸の2や繁殖計画(提携動物園+同大陸の動物1枚)を狙うのがよくあるパターンだと思う。改良できるアクションカードが1枚増えるので、早ければ早いほど有利。
[4] は評判をプラス4する必要がある。大学から入った場合は、手札枚数の大学と研究アイコン1の大学にそれぞれ1評判、2評判が付いているのでこれでプラス3で、マップの配置ボーナスであと1取れれば2ラウンドには到達できる。提携動物園から入った場合はカードの引きに依存する。評判をもらえる動物や後援者、繁殖計画の保全計画カードなどで相当量の評判を増やせるときは戦略の幅が広がるが、そうでないときは早期到達は難しくなる。
一般に、提携動物園から入った場合は [3] の達成が容易で、大学から入った場合は [4] の達成が容易になるためそれで相殺される。すなわち、[1] と [3]、[2] と [4] の組み合わせで、2ラウンドまでに2枚のアクションカードを改良できる状態になる。まれに1枚になってしまうこともあるが、その場合は3ラウンドに挽回する。
そして、3枚目の改良は提携動物園から入った場合は [4]、大学から入った場合は [3] を目指すことになる。これが3ラウンドに達成できればスムーズである。
まとめ: 2ラウンドまでに改良する2枚のアクションカードを計画する部分が最も大事で、加えて中盤以降(順調なら序盤のこともあるが)いかに3枚目の改良につなげて発展させていけるかがポイントになる。この辺りの計画はカードの引きによって途中で変わることもあるが、ある程度事前にプランを組んで頭の中に引き出しを作っておけるとよい。
アクションカードの改良機会は4回あり、例外はない。よって、どうしても改良できないアクションカードが1枚出てくる。すなわち、戦略上どれかのⅡ面の効果は諦めなければならない。
一方、アクションカードの改良はあくまでアクションを強化して得点を稼ぐ手段の1つでしかないので、必ずしも行わなければならない類のものではない。実際、改良するのにかかる手を他にかけたほうが早く得点を伸ばせる場合もある。
改良を3枚以下にとどめる場合は、さらに諦めなければならないⅡ面の効果が増える。改良タイミングの項でも述べたように、提携動物園か大学のうち最初に行かなかったほうは遅れてメリットが薄れるので、これは1つの現実的な戦術である。また、改良までに2つ必要ならそもそも1つも取らない手もあるため、何枚のアクションカードを改良して運用するのかは、ある程度事前に予定しておけるとよい戦略的要素である。
戦術を大まかに分類すると以下
ほとんどは [1] か [2] になると思われる。オーソドックスに提携動物園と大学を2つずつ取れば [1] になるし、大学へ行かないまま終了条件まで得点を伸ばせれば [2] になる。実際、大学を取る手を節約してそれらをすべて保全計画に充てられる状況なら、一般に [2] のほうが保全点の増加が早くて強い。
マップによって向き不向きはある(ここでは割愛)が、提携動物園から入った場合は、中盤に保全計画先の余裕具合を見て大学へ行くかどうかを決めるくらいでもよい。大学へ行かないことにした場合、動物や後援者で評判を得られなければ強さ2の2評判の協会仕事を利用して評判を5に到達させる。また、どうしても手札上限を5枚にしたくて、もしくは研究アイコンがほしくて大学を1つだけ取るなど、そこら辺はケースバイケース。
[3] は大学から入ったら提携動物園なしで回せてしまったケースだが、狙ってできるようなものではないと思う。提携動物園はお金の節約、条件付きの動物、保全計画のためのアイコン、(3つ目での)ワーカーの獲得・・と、大学と比べても広く拡大再生産に寄与するので、まったく取らずに進めるのはたいていは厳しい。後援者の効果などでお金が潤沢な展開になっているときに、まれにそうなることがあるくらい。事前に計画する必要はない。
[4] は、[2] の方針を取っているときに評判を上げなくても(2つ目の提携動物園と保全点2の)2枚のみの改良で回せてしまったケース。こちらも [3] と同様、事前に計画する必要はない。大学に加えて2評判を取る協会アクションも節約できる状態なので、これが可能な流れのときは非常に強い。
まとめ: 主に大学へ行くかどうかの二択でアクションカードを4枚改良するのか、それとも3枚にとどめるのかを考えて計画すればよい。
いよいよここから、どのアクションカードをどのような順序で改良するのかの具体的な話。
各Ⅱ面のメリット、改良タイミング、改良枚数の項を適宜おさらいしながら読んでいただけるとわかりやすいかもしれない。
建設アクションのⅡ面の効果はシンプルに他と比べて秀でているので、建設をベースに考えるのが一番戦略を組み立てやすいと思う。これは一つの考え方にすぎないが、以降はその観点にしたがって話を進める。
建設アクションを改良すると、小型~中型の動物を出していくことの多い序盤においては、ほぼついでに売店や展示館を建設できる状態になる。ゲームの終了はまず5ラウンドか6ラウンドのどちらかになるので、2ラウンドに建てた売店は3~4回働き、展示館や他の建物を組み合わせて収入を増加させていけば、計10~20金程度を生み出す。(一応状況によって異なるので差をつけているが、平均して15金くらいだと思う。)
他にもさまざまなメリットのある状態で、たった2金のコストでしかも手数をかけずにこれだけのお金を得られるのはとても強い。仮に後援者アクションを改良した場合と比較すると、3回お金を得てようやく2ラウンドの売店1つ分の収入に追いつくくらいの差である。
このように、建設のⅡ面の効果は早くから活かせると強いので、2ラウンドまでの改良を前提とすることをお勧めする。休憩の進みが速すぎる特殊な展開にならない限りは、序盤に増やしておいた収入は中盤から終盤にかけての動物勝負にしっかり活きてくる。
一応、建設アクションを改良せずに保全計画による2マス収入を頼って進める戦術もあるにはあるが、ここでは割愛する。Ⅱ面条件のスペースに建設できない制約や、収入が増えづらい点などからも比較的高度な戦術だと思うので、慣れるまでは考えなくてよいと思う。条件がそろっていないときに突き進んでしまうと、おそらく失敗する。
ちなみに上で2ラウンドの売店の強さについて述べたが、もちろん1ラウンドに建設できればさらに合計収入が増えて強い。これは1ラウンドにアクションカードの改良が可能な場合、建設の優先度がさらに上がることを意味している。(著者は変に考えすぎて別のアクションを改良してしまい、大失敗したことがある。一見他に魅力的なルートが見えるときでも、冷静に早期収入増加のメリットに立ち返ってほしい。(※ 屋外区域を除く)
補足だが、1ラウンドの売店が強いということは、建設アクションを改良する前でも1ラウンドであれば売店のみの建設に手数をかけるのはあり。なかなか休憩フラグが切れないときはもちろん、その後の収入増加体制がスムーズに築けそうなら、後援者アクションで5金取ったりするのよりも強いと思う。
建設に次いで改良の候補に挙がってくるのは、Ⅱ面のメリットの幅広い協会や、後々得点増加に重要な役割を果たす動物辺りだと思う。これは建設の次に協会や動物を改良するという意味ではなく、戦略やその時々の状況によって順序は前後する。
つまり、建設アクションの改良を前提にした上で、協会アクションや動物アクションの改良についてどのように考え、戦術を組み立てていけばよいのかがここでの議題。
いくつか一般化できる定石があるので、以下にまとめる。(はじめの3つは協会、最後1つは動物に関するもの)
2ラウンド開始時点での建設アクションの位置は、1ラウンドの流れによって次のように大別されると思う。
本来は [1] や [2] のように動物でいったんお金を使いきった上で、2ラウンドに建設アクションを改良してから効率的に建設を進めるのが理想だが、[3] も売店や展示館による収入を増やしつつ、早めに寄付を始められるので(特にラウンドが長引きすぎて相手も有効手を打ててないときは)悪くはない。
これら4つの定石のうち、上2つは協会単体の改良優先度に関わるものだが、下2つは複数のアクションの改良順序関係に直接影響を与える。次はその話がメインになるため、下2つの定石が使える状態についてはより直接的な表現に替えてまとめておく。
改良タイミングの項では、2ラウンドまでに改良する2枚のアクションカードの計画と、そこからいかに3枚目の改良につなげていくかが重要になる旨を述べた。ここまでの話では、その対象に「建設,協会,動物」の3枚を選ぶのが最もオーソドックスで、幅広い状況で強いということを言っている。
これら3アクションの改良順序関係は全部で6通りある。(そうなることが多そうな順番に並べている)
それぞれどのようなときにこの順序になるのかを見ていく。(この項からお読みの方は、①,② の定義については一つ上の項の末尾をご参照。)
[1]: ① でも ② でもなく、協会による寄付や提携動物園を優先するとき
[2]: ① でも ② でもなく、動物による評判獲得を優先するとき、または寄付のライバルが多いとき
[3]: ① のとき
[4]: ② のとき
[5]: ① かつ ② のとき
[6]: ① かつ ② で、強さ5の動物アクションよりも先に提携動物園を取れるとき
[1] は提携動物園から、[2] は大学から入るルートで特に一般的
[3] は提携動物園から入るルートのオプション
[4] は大学から入ったけど少し評判が足りないときと、提携動物園から行っても評判を得られているとき
[5]、[6] は提携動物園から入ったときのレアケース
提携動物園から入って [4]、[5]、[6] が選択肢になる最もありふれた展開は、繁殖計画の保全計画によって2評判を得られるケースだと思う。それにマップの配置ボーナスで1評判を加えれば届く。
ここまでのまとめ
後援者アクションを改良するのは、主にお金が必要なときと、Ⅱ面アイコンを持つ後援者を出したいとき。(個々のメリットの項を参照)
建設、協会、動物の3つほどではないが、後援者もしばしば検討される。特にゲーム序盤にお金が足りず、後援者を改良すればちょうど動物を出しきって拡大再生産を進めていけるようなときに、何かを諦めてまで後援者を改良すべきかは悩ましい。
建設はほぼ必須なので、諦めるのは動物か協会になる。アクションカードを4枚改良する予定ならば、改良後の効果が後半に強くなる動物は4枚目に遅らせてもなんとかなる場合が多いので、比較的決断しやすい。3枚にとどめる場合は、互いのメリット・デメリットを比較して判断することになる。
一般に、動物を改良する場合と比べて後援者を改良すると、お金を得やすい分序盤は有利になるが、ゲームが進むにしたがって動物を出しづらいことが不利になってくる。この辺はゲーム展開にもよるので一概にどちらか一方が有利だとは言えないのだが、これまでの議論で動物のほうを安定としているのには以下の理由がある。
動物のかわりに後援者を改良して進めるときは、X-トークンを動物アクションに使って手数のロスを防いだり、トラやライオンのようなⅡ面アイコンの付いていない高得点の動物を選んで噛みつきながら出していくなど、より妥協なく効率を追求する姿勢が求められる。この点、深く考えずに改良しても後半に向けて自然に強くなってくる動物アクションと比べて、後援者アクションを改良する戦術は結構高度だと思う。
とりあえず後援者を改良するとお金には困らなくなるので、初心者の立場ではゲームを進めやすくなる要素もあるかもしれない。だた勝負の観点では、アークノヴァには休憩システムがあって収入タイミングが一定にならないことで、お金がない状態のみならずありすぎることも損失になってしまうという少し変わった側面がある。つまり、後援者アクションの改良は一見無難なように見えて、実際にはかなりリスクがある。改良を検討する際には対戦相手の休憩モチベも含め、場の流れを読む力が必要になってくると思う。
これは著者のイメージだが、序盤にちょっとやそっとお金が苦しいくらいだったら我慢して動物のほうを改良したほうが良い結果になる場合が多い気がする。建設を改良して売店や展示館中心で収入を増やすだけでも、ゲーム全体の中で得点化に活かせるお金はだいぶ得られているため。
協会のほうは、主に寄付のライバルが多いときに諦める選択肢になるという点で明確なので、動物よりはまだ判断しやすいかもしれない。とはいえ、3つ目の提携動物園でワーカーを増やせなかったり、寄付が不可能になることで終盤の得点力に影響してくる点は同じなので、メリット・デメリットを天秤にかけなければいけないのは変わらない。後援者アクションでお金を得てより多く動物を出すことで挽回できそうか、ワーカー少なめでも終盤の保全計画で苦労しないか(もしくは保全計画少なめでも訴求点で押しきれそうな展開か)といったことを考えることになる。
このように、動物・協会どちらを諦めるにしてもそれなりにデメリットが大きいので、序盤に後援者を改良した場合は最終的に4枚の改良を目指すことにするのが安定なのは確か。もちろん3枚のまま走りきってしまうこともあるが、(大学へ行かずに)3枚の改良にとどめる予定のときに後援者を改良するのはかなり勇気が要る。
お金以外のもう一つの目的であるⅡ面アイコンを持つ後援者を出したいときも、他のアクションを一つ改良できなくなる(もしくは遅れる)デメリットを発生させる点は同じである。そうしてまでその後援者カードをプレイすることが本当に強いのかどうかは、常に検討する必要がある。得てして出したいカードが手札にあると、盲目的に突き進んでしまいがちなので注意。状況によっては、出さずに埋めたほうが強い場合もある。
ここまで述べてきたのは序盤の改良についてだが、中盤以降に4枚目のアクションカードとして改良する場合は、二択なのでよりシンプルな話になる。お金を多く得られることで新たにプレイできるようになる動物のアドバンテージが、もう一方のメリットを上回っているときに改良すればよい。
建設、協会、動物の改良をメインにすると、最後は後援者とカードの二択になることが多い。カードアクションの改良との比較は、次項で説明する。
カードアクションのⅡ面のアクション効果は、誤解を恐れずに言うと他と比べて弱い。ディスプレイにあるカードは良いものは噛みつきで早々に取られてしまったりするし、他の誰かがカードアクションを改良しているとなおさらなくなるのが早い。そんな中でタイミングよく目当てのカードを取れるかどうかはほぼ運次第になり、目指すべき戦略としても安定しない。
必要なカードの分量的にも、Ⅱ面の効果はオーバーキルの印象(手札を売却できる商業港は例外)。保全計画で噛みつきのキューブをはずせば、カードアクションは噛みつき中心でたまにドローするくらいでも十分足りる。むしろ、カードアクションは直接得点を得られない休憩の手なので、終盤の詰めの段階ではなるべくなら踏みたくない。
個々のメリットの項でも述べたように、カードアクションの改良目的はアクション自体よりも、評判を10以上に上げられるようにすることにある。特殊なケース(主に代弁者を出しているとき)を除いて、これは中盤以降の4枚目の改良でも十分に間に合う。
ここの記事でメインとしている建設、協会、動物の3枚を改良すると、4枚目は後援者とカードの二択になる。大まかな判断基準としては、お金のメリットが大きそうなら後援者、評判10以上のボーナスのメリットが大きそうならカードのほうを改良すると考えておけば間違いない。
より具体的には、評判の進みが比較的早くてゲーム終了までに評判14の2つ目の1保全点ボーナスまで自然に届きそうなときは、多くの評判を無駄にしないためにもカードのほうを改良でよいと思う。そこまでは進まずにせいぜい評判11の1保全点で止まりそうな状況なら、少量のボーナスは諦めて後援者を改良し、お金を優先するのもあり。
ゲーム終了が近ければ、感覚に頼らずにどちらを改良したほうが高得点になるのかを論理的に導き出すことも可能。評判10以降のボーナスは1保全点を3点とし、加えてカードやX-トークンが何点分に寄与する状況なのかを見積もる。そして、後援者を改良することで(たいていはお金からの動物出しで)増える得点と比較する。
ちなみに、最終得点計算カードの条件などで評判を上げたいときは、早期に動物アクションを改良して評判を上げていき、後ほどカードアクションの改良につなげるのが一つの手筋としてはある。ただし、ゲーム終了の早い4人戦ではなかなか評判を上げている暇がないことも多いので、これは積極的には狙わずに流れにまかせることにしたほうが無難かもしれない。実際、評判の上がり具合はカード運にもかなり左右される。
最終的にカードアクションの改良なしでも評判9までは行けるが、評判条件の最終得点計算カードはその状態で2保全点、他いくつか評判9で保全点の入る後援者カードもあるから、そこで止めたとしても悪くはない。むしろ、即時ボーナス以外に評判を10以上に上げるメリットはあまりない。
これまでの議論を総合すると、建設、協会、動物3枚の改良を優先する以上、後援者を改良したら必然的にカードは改良できないことになってしまうが、やや特殊な戦術として協会以外の4枚を改良して回す方法もある。(BGAでこれを主戦術にしている強豪の方も一部見かける。)
この場合は、協会は提携動物園と大学を2つずつ取ったあとはほぼ保全計画に特化し、寄付ができない分を動物、後援者、評判ボーナスなどの上乗せで補うことになる。どうしても後援者とカードの両方を改良したいときは、このかたちがメインになるかもしれない。
一応レアケースとして、動物以外4枚改良の状態になることもあるが、これは狙ってそうなるわけではないので気にしなくてよいと思う。序盤に後援者を改良して4枚目の改良を動物にする予定で進めているときに、思いのほか評判が進みすぎたためにカードの改良が必要になると結果的にそうなる。著者も(記憶上)一度だけ経験があるが、カードと動物を天秤にかけた結果カードになったのであれば特に問題なく、動物を改良せずに回せている時点でとても運の良い状態である。