アークノヴァ/マップ のバックアップ(No.35)


総評

No.マップ名固有効果固有の保全ボーナス保全点ボーナスとくちゃん
評価(4人戦)
提携4大学3職員3
1展望塔展望塔の隣接を裏返すと2訴求点お金で後援者210A
2屋外区域屋外区域に隣接している通常囲い地の大きさ+21保全点021S
3シルバー湖湖の周りに2金が多い連続手番120A
4商業港1ターンに1度カードを3金で売れる大学111B+
5園内レストラン園内レストランに隣接すると1収入爬虫類館/大型鳥類館201B
6研究機関動物カードの条件1つ無視2機敏102A+
7アイスクリーム屋ボーナスで売店無料設置/全て獲得すると各売店+1金2育児嚢012S-
8ハリウッド・ヒルズ後援者獲得ボーナス/全て獲得すると後援者レベル-1提携動物園111B-
AマップA初心者用マップ1保全点222-
0マップ0初心者用マップ1保全点222-

個別解説

展望塔

展望塔.png

とくちゃん評価:A

上級マップの中でも随一の得点能力を持つ。展望塔の周囲は4マスあり、ここを別々の囲い地にして裏返すと計8訴求点。野生復帰および爬虫類館や大型鳥類館の建設による移動で再利用できることを考えると、平均して5~6回発動で10~12訴求点くらいは現実的に可能だと考えられる。

これはシンプルに他のマップと比べて10点強のアドバンテージを持っているわけで強力なのだが、基本戦略のコスト換算の項(執筆中)でも述べているように動物で訴求点を得ようとすると概ね1訴求点あたり3金弱のコストがかかるので、以下の比較を試みてもその強さがわかると思う。

そもそも、お金を訴求点に変換するには(建設→動物の手順で)手数がかかるので、自動的に訴求点が入ってくる展望塔はそれすらも節約して周囲よりも早く訴求点を進めていくことができるわけで、順調なら非常に高速でゲームを終わらせられるポテンシャルを持っている。

一方、能力が強力な反面、以下のようなデメリットもある。

ハマれば強いことは確かなのだが、このような数々のデメリットが障害になり、ゲームが終わる頃には追いつかれて結構手数がかかってしまったりもする。それでも訴求点分のアドがあるために大崩れはしづらく、安定している印象。

一部、巷での評価は最悪みたいなのだが、著者(とくちゃん:Tomoaki Tokunaga)のBGA結果では2回に1回は30ターン未満でゲーム終了まで到達しており、30ターン以上かかったゲームでも大幅に遅れることは滅多にないので、他のマップと比べても決して悪くない。

以下、展望塔をプレイする上でいくつかポイントになると思われる事柄を挙げておく。

屋外区域

屋外区域.png

とくちゃん評価:S

屋外区域周りのギミックと、提携動物園の配置ボーナスに特色のあるマップ。上級マップの中では唯一お金を得られる配置ボーナスがないが、屋外区域周りで最大4×4=16金節約できるので、ここをうまく活用していけばそこまでお金に苦労することもない。

お金の節約以外にも建設のボトルネックを解消できるのが強い。通常は改良後の建設アクションを強さ5で打っても、複数の囲い地を同時に作ろうとするとその多くが小型になってしまうが、屋外区域に隣接させれば複数を大型ないし中型用にすることができ、出せる動物の受け皿が大幅に広くなる。

保全計画収入の2スペース囲い地も然りで、これを屋外区域に隣接させれば、建設に手数をかけずに(サイズ4の)大型動物を飼う場所ができる。さらにここに飼った動物を野生復帰させれば、大量の保全点を得ながらまたこの無料の囲い地を利用できるわけで、これは他のマップにはない屋外区域ならではの効率的な動きである。

提携動物園を取れる配置ボーナスの強さも絶大で、屋外区域の戦略はほぼここに由来すると言っても過言ではないほど。通常は1ラウンドに協会職員を使って1つしか取れない提携動物園をもう1つ取れるわけで、次に挙げたようにいくつかの固有の強い動きが可能となる。研究機関の大学とは違って提携動物園は5つあるから、種類が関係しなければ取りはぐれて計画が破綻するリスクもない。(BGAの全員同じマップのゲームは除く)

このように受けが広く、ある程度どのような手札が来ても対応できるのが屋外区域の強み。できることが多い中で的確に最適な戦術を選択する必要があるので、比較的玄人向けのマップだとは思う。だが噛み合えば多少雑に進めても十分強いので、BGAでも30ターン未満の好結果を残している人が多い印象。(対戦して強いなーと思った人の履歴を見たときに、他のマップでは軒並み30ターン以上かかっていても、屋外区域は28~29ターンで終わっていたことが何度かあった。)

著者(とくちゃん:Tomoaki Tokunaga)のBGA結果でも、4ラウンド24ターン終了という最高の結果を残している。

キーとなる提携動物園の配置ボーナスは取りやすい位置にはあるが、1回の建設で到達することは不可能なので、ユニーク建物系の後援者がないときは、マップ上辺か左辺から入って建設アクションを2~3回踏んで取る。

物にもよるが屋外区域のユニーク建物の有用さはアイスクリーム屋に次ぐレベルだと思うので、初期手札にあるときは積極的に使っていきたい。

右下からスタートして屋外区域周りをすぐに活かす手もあるが、提携動物園ボーナスの真逆なので、ユニーク建物を利用してお金をかけずに早期に左上まで伸ばすプランがない限りはやめておいたほうが無難だと思う。

屋外区域周りの使用は急ぐ必要はなく、3ラウンド辺りからでも十分。コスト軽減できるとはいってもそもそも大型動物は重く、序盤は小型動物中心で売店や展示館を絡めて拡大再生産を進めたほうが収入効率は良い。

むしろ屋外区域は5金の配置ボーナスがなく序盤に使えるお金は限られているため、1ラウンドからたくさんのお金を動物に投じることで売店や展示館を作れなくなってしまうと、それが終盤の動物出しにも響いて大きくポテンシャルが下がってしまう。言い換えれば、序盤の収入の重要度はどのマップよりも高い。

例えばコアラのような、高価な高訴求点動物は1ラウンドに出せると一見順調に進んでいるように見えるから注意が必要。実際はそれでお金がなくなってその後の建設と動物出しに苦労することになり、売店や展示館をベースにする場合と比べると収入も増えない。

他、1ラウンドのスマトラトラ出しがクローズアップされている印象があるが、これも罠だと思う。研究2の大学と後援者アクションでお金を取ってまで出したとして、それでお金が枯渇する上に収入も大して増えないので、2ラウンドにできることがかなり制限されてしまう。

屋外区域は何よりも2スペース囲い地の保全計画収入が強いので、なるべく早めにオープンにしたい(※)。序~中盤にかけては地道に拡大再生産を進めて収入を整えた上で、終盤に潤沢になったお金を使って屋外区域周りに強力な大型動物を出しまくるような動きが一番強いと思う。

※ 追記:意外と5金収入や噛みつきのほうが強い場合もあるので、状況に応じてよく考えるべし。例えば、保全計画が野生復帰のときは当面囲い地よりもお金が不足するから5金が優勢になるし、後援者の効果などでお金が潤沢だったり特別有効なカードがめくれているときは噛みつきの優先度が上がる。

提携動物園は4つ目には保全点が付いていないので、早く取れるとはいえ一般には3つで十分。その状態で大学は取らずに保全計画中心で走りきれてしまえば一番速いが、保全計画先が少ないときはひとまず大学を取って、協会以外のアクション効率を高めて勝負する流れになると思う。

最後に、「生息地の多様性」の基本保全計画の狙いやすさに触れておく。2ラウンドまでに提携動物園を3つ取った上で保全計画にも行けるから、ここまでに提携動物園以外の2種の大陸の動物を出せれば5種類に到達するし、後援者で増やしたりできるとさらにハードルが下がる。

このように、屋外区域の生息地の多様性との相性の良さは随一だから覚えておくとよい。ただでさえ最強のマップなのに、生息地の多様性があるとピックの優先度はさらに上がる。

通常、生息地の多様性は無理に狙おうとすると大陸アイコンの種類数を増やすためにすぐに使う予定のない提携動物園を取ることになり、3金の軽減を受けられなくなって拡大再生産上はかなり損なのだが、屋外区域ならば他のマップよりも早いタイミングで提携動物園を集めていけるから、そのデメリットは少ない。


シルバー湖

シルバー湖.png

とくちゃん評価:A

シルバー湖の特徴は、主に以下の3つ。

お金は22金程度だと、他のお金系マップ(アイスクリーム屋園内レストラン)で入る収入と比べてもやや少ないくらいだが、シルバー湖の場合は湖周りから建物を置き始めれば、序盤からこれらのお金を使って拡大再生産を推し進めることができる。

1評判の配置ボーナスが2ヶ所あるのは、他にアイスクリーム屋のみ。ここで2評判を上げられることで、他に協会アクション1回(2評判の大学を取るか、強さ2の2評判)のみで評判を5に届かせることができ、より早く安定したタイミングでアクションカードを改良できる。

保全計画キューブの決断の即時効果は、動物カードのコスト(決断は13金相当)に鑑みても他のマップの固有キューブ能力と比べて破格の効果なのだが、終盤に手数をかけずに大幅に得点を伸ばしうるので非常に強い。

このような特徴から、巷では最強マップの呼び声も高いシルバー湖・・なのだが、実は著者(とくちゃん:Tomoaki Tokunaga)のBGA4人戦の結果では、平均的な成績しか残せておらず、そこまで目に見えた強さを感じるまでには至っていない。屋外区域アイスクリーム屋といった他の強力なマップと比べて、30ターン未満でゲームを終えられる確率が著しく低い。(評価については、他者の結果も参考にして、自分の印象よりもやや高めの A にしてある。)

以下はデメリット側の話がメインにはなるが、著者の見落としもあるかもしれないので、シルバー湖はもっとこんなところが強いといった意見があれば、他の方の追加記事を待ちたいと思う。

シルバー湖周りで得られる22金は、動物に投じたとすると8訴求点相当で、最低限の展望塔能力と変わらない。実際、他のマップでも5金を拾えたりするから、特別な能力として見たときは決して多いわけでもない。なので、シルバー湖のメリットを活かすにはこれらのお金をいち早く有効に使って、訴求点を上げたり売店や展示館を充実させたりして収入を上げる必要がある。

収入を上げるにしても3ラウンドでは5ラウンド終了のゲームで2回しかお金が入らないからやや遅く、2ラウンドまでにある程度は上げておきたい。そう考えたときに、はたして2ラウンドまでに湖周りのお金を多めに取り、それらを動物に使いきることが可能なのか?・・という問題になってくる。

著者の感覚だと、これが結構狭き門に思えて苦労している。湖周りをたくさん埋めようとすると自ずと囲い地が小型になり、高コストの小型動物を引かない限りはお金を使いきれないし、逆に大型動物を出そうとすると湖周りの一部しか埋められずにお金が足りない・・という事態になってチグハグ。そもそも周囲の休憩のペースが速いと、自分だけたくさんお金を持った状態でフラグを切られてしまうこともある。

もちろん、うまいこと動物出しに成功して保全計画でも先行できる状況になれば強いのであるが。後援者のユニーク建物を湖周りに配置するプランも頭に入れておきたい。それで大量のお金を得ることで、通常では出せない動物を出せて伸びれることがある。

お金を手元に抱えたまましばらく収入が上がらない展開になると弱いので、動物が噛み合ってないときはむしろ湖周りにはこだわらずに、売店や展示館の位置関係を優先して収入を上げることを重視したほうがよいかもしれない。そうしたとしても、他のマップに比べれば序盤からお金を得やすいことには変わりない。

連続アクションの保全計画キューブについても、下準備ができていないと有効に活かしきれないので注意が必要。終盤の得点行動として強いのは一般に動物と協会であるが、動物は囲い地を用意した上でお金が残っていないとプレイできないし、協会もX-トークンをあらかじめ準備していないと連続では打てない。

ゲームが長引くほど手元は強くなっていくので、シルバー湖ではある程度後援者を出しながら進めたり、あまりゲーム展開が速くなりすぎないように注意したほうがよいかもしれない。湖周り以外でも後援者の力を借りてお金をたくさん手に入れられたりしていない限り、相手に高速展開を仕掛けられると連続アクションを使う機会がないままゲームを終わらせられてしまうことも多い印象。

もう1つシルバー湖のデメリットとして、協会絡みの保全点ボーナスの組み合わせの悪さがある。最も取りやすい3つ目の協会職員には保全点が付いておらず、4つ目の提携動物園には1保全点、そして必ずしも必要にはならない3つ目の大学に2保全点。

もし大学を取らずに高速で走りきるようなルートを選択した場合、ここの保全点が入らないことによって、マップを全部埋めたけれども終了条件に届かず、得点行動がなくなって頭打ちになってしまうリスクが他のマップよりも大きい。(著者は他のマップでは一度もないにもかかわらず、シルバー湖ではこのようにして負けたことが二度もある。)

その意味でも大学へは行ったほうが安定なのだが、なかなかゲームを早く終了させることは困難になる。当サイトの厳選棋譜には25ターンで終わった実績もあるが、一般にはシルバー湖は拡大再生産重視でゆっくりと手を進めて、最後に連続アクションを利用して大量得点を取って勝つような戦略に向いていると思う。

このように、お金は入るけれどもそれを勝ちにつなげるにはなかなかテクニックの要るシルバー湖。勝つのは難しくても序盤からお金がなくてやりたいことができなくなってしまうリスクは少ないので、マップAや0を卒業したばかりで上級マップを始めたての初心者には比較的お勧めかもしれない。


追記:

その後、自分も4ラウンド25ターン終了という飛び抜けた結果を出し、展開によってはシルバー湖はものすごく強いことを実感するに至った。架空索道地質学者の最強コンボなので、それをシルバー湖自体の強さだと言ってしまってよいのかはわからないが、序盤からお金が潤沢なシルバー湖だからこそここまで早く終わったのは確か。

後援者で訴求点を大量に稼げるときは、盤面を埋めずに提携動物園や大学を少ししか取らない状態でもゲーム終了まで持っていけるため、協会絡みの保全点ボーナスの噛み合いの悪さは特にデメリットではなくなり、使えるお金が多い点だけがメリットとして残る。なので、この展開のときのシルバー湖は随一の強さだと思う。

つまり、架空索道水族館土着の家畜といった、大量に訴求点を稼げる後援者のシルバー湖との相性は特に良いと言える。


商業港

商業港.png

とくちゃん評価:B+

手札を3金で売却しながら回していける固有能力と、なんといってもマップから取れる乗数トークンが特徴的なマップ。

乗数トークンはうまく使えば非常に強力で、特に終盤に協会アクションに載せて保全計画を2回実行できれば、寄付などとも合わせて1手で大量得点を稼ぐことができる。この動きが間に合えば勝ち確レベルに強いが、そこに到達する前にゲームを終わらせられてしまうとまず勝てないという、両極端な性質を持っている。

終盤に向けて保全計画先を2つ用意できるかどうかは、保全計画カードの引き運やうまいこと基本保全計画に合った動物を取れるかどうかにかかっており、安定性には欠ける。また、一般に準備が完了するまでには手数がかかるので、後半追い上げ型の性質を有していると思う。(この点は展望塔とは真逆。)途中の保全計画を控えて温存したりするのは弱いので、そこは拡大再生産を優先して流れに任せたほうがよいであろう。

1つの定石として、事前に2スペース囲い地の保全計画収入をオープンにしておくと、ラウンド開始と同時にこの2スペース囲い地で乗数トークンのボーナススペースを埋めることができ、お金をたくさん持っていてかつしばらく休憩フラグを切られる恐れのない状態で、乗数トークンを確実に活かすことができる。流れによっては協会ではなく動物に乗数トークンを載せて、訴求点ラッシュをかけてもよいかもしれない。

手札売却の能力については、常にカードアクションで噛みつきのかわりにドローを選択することにすれば手札枚数が1枚増えるから、大まかには「カードアクションのたびに3金増える効果」のようなものであると考えることができる。それに加えて、疾走知覚力などのドロー効果で要らないカードを引いたときにも3金に換えられるメリットがある。

実際にはどうしても噛みつきたいくらいに欲しいカードがディスプレイに並んでいることもあるし、ドローした結果出せる動物を1枚も引けずに出遅れてしまうリスクを常にはらんでいるので、そのデメリットの大きさからそこまで強い能力だとは思えない。特に2ラウンドあたりで引き運に恵まれなかったときは痛く、著者もそれで大きく出遅れた経験が何度かある。ドローした中から使うカードを自由に選べるから柔軟性があるように見えて、現実には噛みつきの回数が減ることで戦術選択の柔軟性がなくなる。ドローに頼る場合、よほどの引き運に恵まれない限りは基本保全計画に合った動物を計画的に集めるのも難しくなる。

マップ構成についても、序盤から能力を使おうとすると右下の5金を取れなかったり、左下がかなり狭くて直接つなげられる囲い地が2スペース以内だったりと、条件が厳しい。できれば後々まで取っておきたい機敏の配置ボーナスが左下にあるのもマイナスポイント。売店や展示館を効率的に配置するのも、他のマップと比べるとやや難しい印象。

カードアクションを改良すればよりカード選択が容易になり、強さ5で打てば噛みつく場合と比べてカード2枚分プラスで6金の増加になるから強化はされるが、元々カードアクションの改良は弱めにデザインされている印象なので、商業港だからといって必ずしも改良する必要はないと思う。他のマップと比べれば有効な場面が多いのは確かだが、早めに評判を上げていける流れのとき以外は、カード選択のメリットは限定的になると思われる。

このように、乗数トークンを有効に使えれば強いが、そこに至るまでが長かったりいろいろとクセがあってプレイが難しいというのが商業港の所感。

固有能力は継続的にお金を生み出すため一応お金系のマップには入ると思うが、シルバー湖のように序盤からまとめては手に入らないので、園内レストランタイプでやや魅力は薄い。アイスクリーム屋のような爆発力もない。

とはいえ、カードアクションを強さ4で打って2ドローするだけでも6金になり、強さ5の後援者アクションの5金よりも上なので、やりようによっては多めにお金が入ってくる。乗数トークンの使用に備えてゲームを長引かせたい立場なので、カードアクションでお金を得つつ、後援者アクションではなるべく後援者をプレイして休憩トークンを進めないようにするのも1つの手。カードアクションでは休憩トークンが2しか進まないので休憩タイミングを遅らせることができ、他プレイヤーのお金が枯渇したあとでも自身は手札を売却して得たお金で行動を続けたりできる。

長らく高速展開に弱い印象だったが、最近は著者(とくちゃん:Tomoaki Tokunaga)のBGA結果でも早く終わらせられるゲームが増えてきたので、少し評価は上がるかもしれない。方向性としては、爬虫類館や大型鳥類館にたくさん動物を飼うことができたり、保全計画先が豊富な展開のときに特に有望だと思う。

商業港は相対的にカードアクションを有効利用できる特性から、他に何か要らないアクションがあっても(一部の動物で得られる機敏の効果をそれに充てたりして)手数効率を維持しやすいので、建設アクションを節約できる爬虫類館や大型鳥類館を利用する戦術とは相性が良いと思われる。


園内レストラン

園内レストラン.png

とくちゃん評価:B

レストラン周りで毎ラウンド5金を得られる。一見おいしい効果に見えるが、アークノヴァのゲームの多くは5ラウンドで終了するため、初回の収入からフルに発動させても5×4=20金。6ラウンドに突入しても25金しか利を得られない。シルバー湖の場から取れるお金が22金で、序盤から取って活かせることを考えると、毎ラウンド定期的に5金ずつで計20金しか入らないのは、控えめに言っても弱い効果だと思う。

同じく収入系の特殊能力を持つアイスクリーム屋と比較するとわかりやすいと思うので、比較を試みてみる。

以上のように、ほぼすべての項目でアイスクリーム屋が上回っており、園内レストランのほうが強い場面を探すのは難しい。

アイスクリーム屋ならふれあい動物が手札になくてもふれあい動物園を建てる意味は十分にあるが、収入力の低い園内レストランでこれをやってしまうのは罠だと思う。建設に6金かけても毎ラウンド3金しか返ってこないので、取り戻すまでに2ラウンドもかかってしまう。

良くも悪くも、園内レストランは基本保全計画でマウントを取らない限り勝ちを目指すのはなかなか難しいと思うので、1ラウンドからいち早くレストラン周りを覆うことよりも、地道に基本保全計画につながる動物を出しながら無理のない手順で埋めていくことをお勧めする。後援者のユニーク建物などを利用できるときは別だが、そうでなければ一般には5金収入得られるのは2ラウンドの終わりからになると思う。

ちなみに、マップ左下には後援者、右上には1評判の配置ボーナスがあり、初動の戦術範囲は比較的広いのだが、どちらも狭い所にあってふれあい動物園の建設を強いられるかたちをしているのが少々厳しい。ふれあい動物園は、「種の多様性」の保全計画があるときを除いてはなるべくは建てたくない。

このように配置ボーナスには比較的恵まれているのだが、狭い場所にあるために柔軟な利用が難しい印象。一方、マップ周囲は比較的広く、終盤でも大型動物を飼う場所に困ることは少ない。特に、4マスの大型動物をたくさん飼いやすい。

もう一つ触れると、保全計画の際に爬虫類館や大型鳥類館を無料で建てられるのも特徴的だが、特に大型鳥類館は右下に置きやすく、鳥類方面とは相性が良い。右上にもすっぽりハマるが、水域隣接を満たせないので注意。効果自体は10金プラス強さ5の建設アクション1回分で、特別囲い地を有効利用できるなら十分強い。基本保全計画に爬虫類や鳥類があるときは、建てることを前提に行動してよいと思う。

上記でアイスクリーム屋との比較をしてきたが、保全点ボーナスに関して言うなら園内レストランは4つ目の提携動物園に2保全点が付いており、ここに保全点が付いていないアイスクリーム屋とは大きく異なっている。むしろこれは展望塔と同じである。

提携動物園に2保全点が付いているということは、大学に比べると取りやすく、お金の軽減と大陸アイコンの点で動物や保全計画と親和性の高い提携動物園だけを取って押しきる戦術に6点(1保全点を3点として)を与えて正当化することを意味するので、より高速展開に向いている。

園内レストランの20金は、展望塔の10~12訴求点と比べると(1訴求点のコストは3金弱相当のため)弱く、高速展開を仕掛けづらいのは否めないが、保全計画争いに関しては、入ってくるお金を動物に投入してアイコンを増やせる園内レストランに一日の長がある。

お互いにぶん回った状態ではおそらく展望塔に負けてしまうと思われるが、そこは覚悟を決めて黙々と動物と保全計画に特化し、上に挙げたような園内レストラン固有のメリット(評判の範囲内からカードを取れるボーナスの多さ、水域や岩隣接のしやすさ、大型鳥類館との相性など)を活かしながら、走りきることを目指そう。強い動物を獲得する機会をなるべく逸しないように注意しながら。

何か特殊なコンボが成立したとき以外はほぼそれしか勝ち筋がなく、保全計画争いで上回れれば十分強いのだから…

安定してやや弱いマップよりも、大沈みすることが多くても展開に恵まれれば伸びて勝てるマップのほうが強い・・って誰かが言ってた。笑

<厳しいマップであるからこそのまとめ>

研究機関

研究機関.png

とくちゃん評価:A+

これといった弱点がなく、オールマイティに強力なマップ。以下のように、いろいろなものを少しずつ寄せ集めたような特徴を持っている。

これらの特徴は密接に関連しており、一言で良さを伝えるのは難しいが、まとめると次のようなメリットに集約されると思う。

上の3つがリスクを減らすもので、下の1つが上振れしたときの伸びを表すもの。つまり、どんな状況でも一定の強さがあり、その上でうまくいけば爆発的に伸びることを意味する。実際、著者(とくちゃん:Tomoaki Tokunaga)のBGA結果も30ターン前後で安定しており、カードや展開に恵まれれば26~27ターン・・と、上級マップの中でも上位の強さを感じるに至っている。

初手の受けの広さについて

それでは具体的に見ていくが、まずは初手の受けの広さについて。マップ構成が恵まれていることによって、次のように手札に応じてさまざまな戦術が取れる。

X-トークンや1評判がほしいのは主に後援者絡みの特殊なケースなので、多くは条件無視能力が必要か否かによって左下スタートか右辺スタートの2択になる印象。

右辺スタートでは2~3マス建設で5金を取ったあと、売店がうまい具合に1評判と大学のボーナススペースの間にはまるので収まりがよく、拡大再生産を順調に進めやすい。条件のついた動物が手札になければ、こっちのルートをメインで考えてよいと思う。

動物カードの条件無視能力は、主に序盤の受けの広さと中盤以降の加速力を演出するものなので、対象となる動物が手札にないときは最初から使える状態にする必要はない。後から必要になったときにつなげられるように建物を伸ばしていけば十分。実際、条件が付いてなくても噛み合った動物を引ければ、一度も能力を使わずに高速でゲームを終わらせられる程度にはマップ自体が強い。(補足:アイコン条件無視能力について

お金について

左右どちらからのスタートでもそれぞれ近いほうの5金スペースにはすぐに届くため、序盤の資金繰りにもそこまで苦労しない。

お金については他のマップと比べて特に恵まれているわけではないが、無駄遣いせずに収入効率の良い動物から出していくようにすれば問題ない。

動物カードの事故率の低さについて

これはそのままの意味だが、何かしらのアイコン条件の付いた動物カードは全128枚中63枚で、全体の半分弱もある。よって、1つ条件を無視できるだけでも使えるカードの候補はだいぶ増え、事故率が大幅に軽減される。特に中盤にカードアクションでカードを3枚引いてきたときに、その中に出せる動物が1枚もなかったりすると致命的なので、これは大きい。

他のマップでは苦しさしか感じないような条件だらけの初期手札でも、研究機関なら無理なく回せたりする。

ディスプレイに並んでいる動物カードを活かしやすいのも有利。基本保全計画に向けたアイコンを集めやすかったり、野生復帰と相性の良い安価な大型動物を出しやすい利点がある。

建物の建てやすさと動物の飼いやすさについて

以下にまとめる。

このように、手札や進めたい方向に応じてどのような戦術にも対応できる柔軟性がある。

アイコン条件無視能力についての補足

研究機関の能力は、一見ジャイアントパンダのような強力な動物を早めに出せる魅力に目が行きがちだが、出せるからといって序盤から保全点系の重い動物を出しにいくのは罠だと思う。それしか候補がなければ仕方がないが、一般には売店を絡めて軽めの動物から出していったほうが、収入効率が良くてその後の発展につながる。

実際、少しだけ条件の付いてる軽めの動物はたくさんあるので、研究機関の能力を発動させるなら序盤はそういった動物をうまく活かして伸ばしていきたい。特に、提携動物園条件の付いている小型動物は強いものが多いので狙い目。

収入の安定してくる中盤から終盤にかけては、いよいよ高コストの動物の条件軽減効果が活きてくる。得点効率の良い動物を選んでどんどん出していくとよい。

具体的には、ジャイアントパンダくらいに重い動物を無理なく出せるのは3ラウンド以降だと思う。3ラウンドの収入量が、ギリギリ重い動物1枚分のコストに届くイメージ。

大学のボーナススペースについて

提携動物園とは違って大学では協会職員を獲得できないため、屋外区域と比べると戦術的にできることは少ないが、それでも最短で3ラウンドにはアクションカードを4枚改良することができる。

ただし、大学はなくてもなんとかなることも多いため、配置ボーナスで1つ取ったからといって必ずしも2つ目を取る必要がない点に注意。もし保全計画にたくさん行ける状況なら、2機敏の能力もあるので保全計画に特化して走りきったほうが強い。

ボーナス自体、大学の競争率が高そうなら急がずに、提携動物園から入って3ラウンドあたりにゆっくり取るかたちでも十分。

屋外区域の提携動物園スペースと比べて(Ⅱ面スペースが邪魔していて)周辺部から離れているため、ユニーク建物でもない限り1ラウンドから大学を取って評判や研究アイコンを活かす用途には使えない。

2機敏の保全計画キューブについて

動物カードの条件無視能力と並んで、強い個性を持つ能力。これを解放すれば、収入のたびに必要のないアクションを2つも左に葬れるので、打ちたい特定のアクションを自在に打ち続けられるようになる。

一番強いのは、動物と保全計画(協会)で得点行動を積み重ねられるパターンで、終盤にものすごい勢いで得点が増えて高速で終わる。後援者アクションで休憩フラグを切っていきたいことを考えると、残るのはカードと建設なので、建設アクションを節約できる爬虫類館や大型鳥類館とは相性が良い。(基本保全計画に爬虫類や鳥類があるとなお良い。)保全計画カードも多めに確保したい。

ただしこれはあくまで1つのパターンであり、噛みつき、2マス、お金など他の保全計画キューブの効果が欲しくなる場面もあるので、その場その場で最も発展する選択肢を選びながら流れに任せていけばよい。実際、終盤になってしまうと2機敏よりもX-トークン3つのほうが有効な場面も多く、2機敏を解放せずに終わってしまうこともよくある。

そもそも研究機関は全体的に丸く、強い効果をたくさん持っているわけで、そのうちの1つや2つを活かせなかったとしても何も気にすることはないのである。


アイスクリーム屋

アイスクリーム屋.png

とくちゃん評価:S-

売店をもらえる配置ボーナス3ヶ所と、それらをすべて埋めたあとの高い収入力に定評のあるマップ。お金方面に特殊能力を持つマップの中では最強クラスの強さを誇る。

売店の配置ボーナスは広範囲に散らばっており、3ヶ所すべてを埋めるのは一見大変そうに見えるが、埋めるたびに1マスの売店が付いてくることによって建設を先に進めていけるので、意外とそこまでハードルは高くない。ユニーク建物の力を借りつつうまくいけば1ラウンド、特に何もなくても2ラウンドには完成させられる。

同系統の園内レストランとの比較の項でも述べたが、売店による収入増加の効果は絶大であり、以下のようにとにかくスキがない。

売店3マス分のアドバンテージと、建設で先行することになる戦術的要素により、最終的にマップ埋めきりも他のマップと比べると容易である。また、最後の協会職員獲得による2保全点も比較的取りやすい。

序盤こそ建設重視で少し遅れるが、中盤以降は常に自分だけダントツで収入が多い状態になるため、お金のアドバンテージを活かしてどんどん動物を出していき、上述のマップ埋めきりによる7訴求点や協会職員完遂の2保全点なども合わせて、5ラウンド辺りで一気に高得点を稼ぎつつゲームを終わらせることができる。

アイスクリーム屋完成(売店マスを3つとも埋めること)までの建設の仕方についてはいくつかのパターンがあるが、詳しくはリプレイ集を参照願いたい。序盤の建設をうまく進めないとアイスクリーム屋のメリットを活かせないので、ここは一つの重要なポイントである。

リプレイ集において使った代表的なカードのラインナップを見ていただけるとわかるように、各種のユニーク建物系の後援者1マス建物を置ける大陸の専門家系後援者気取った姿勢の鳥たちなど、建設をブーストしてくれる後援者や動物(ピンクで示されたもの)は結構あり、多くのカードがアイスクリーム屋と噛み合う。

また、ふれあい動物園を有効に使える。たとえふれあい動物が手札になくても、アイスクリーム屋だけは構築過程でふれあい動物園を建てる価値がある。建設に6金かかっても、売店で挟み込んで完成を早められれば、増加した収入によって十分元を取れるからである。(その上、建設が進んでマップ埋めきりの7点へと近づいている。)

ユニーク建物の形はさまざまであり、それによって建物配置のパズルも異なるが、不思議とほとんどがマップ右下からのスタートでうまく収まる印象。まれに左辺からスタートするのが適切なときもあるが、この記事を書いている時点でのリプレイ集22件のうち、それは1件だけで残り21件すべてが右下からのスタートである。なので、右下からスタートするときの建設パターンさえ覚えてしまえば、アイスクリーム屋の序盤は概ね問題なくプレイできる。(本来はゲームごとに考えるべきだが)

詳細はリプレイ集にゆだねてここでは軽く触れるに留めるが、最初の右下への通常囲い地の置き方は、配置ボーナスによる売店を置く位置で分けると2通りある。その後、(ユニーク建物系の後援者がなければ)2つ目の売店マスに到達させるのにふれあい動物園を使うとよい。ふれあい動物以外の小型動物を出す予定なら、2スペース囲い地と展示館に分けて建設する手もある。そんなところ。

ちなみに最大級に効率が良くて建設で後れを取らなければ、このような結果も夢ではない。

これまで主にメリットについて述べてきたが、以下はデメリットとそれに対する注意点について。

一つは大型動物の飼いづらさ。アイスクリーム屋完成までの構築過程で中央のエリアを埋めてしまうため、中盤から終盤にかけて大型動物を飼えるエリアは限られる。具体的には、右辺の4スペース、右上の5スペース、左上の4スペースの3ヶ所を、いざ強い大型動物を取れたときのためにしっかり残しておくことが重要。左下のエリアも広くて一応飼えるが、ここの評判ボーナスはなるべく早めに欲しいので、飼うにしても中盤くらいまでが現実的だと思われる。

同様に爬虫類館と大型鳥類館も建てづらい。爬虫類館は岩隣接に限って左下くらいにしか建てるところがなく、かなり厳しい。そもそも爬虫類には小型動物が多く、アイスクリーム屋は小型動物自体は飼いやすいから無理に建てなくてよいと思う。大型鳥類館はうまくやれば右上に水域と岩の両隣接で建てられる(リプレイ集を参照)が、スペースを残すのに多少の制限を伴う。鳥類の基本保全計画があるときは、ほぼそれを目指すことになる。岩隣接のみでよければ、無理なく左上に建てられる。

まとめると、アイスクリーム屋は売店5つ程度あればもう収入は十分なので、完成後の売店追加は控えめにし、なるべく動物を飼うスペースを残す視点が重要になる。

もう一つ、水域隣接の難しさも固有の弱点。アイスクリーム屋の水域は右辺に偏っており、水域に隣接するスペースも11マスと、全マップの中で一番少ない。水族館のような強力な後援者カードも、序盤で売店マスを埋めるのに使える状況でない限りは使用がためらわれたりする。

逆に、岩に隣接するスペースは27マスで最も多く、両極端。地質学者土着のトカゲはもちろん強い。土着のトカゲは、特に後援者のボーナススペースで出すのに向いている。

これは流れにもよるが、お金はあってもあらゆる動物を出しやすいわけではないので、うまいこと保全計画と噛み合った動物を取れずに保全計画争いで後れを取ってしまうリスクもある程度ある。そうなるといくら収入力に定評のあるアイスクリーム屋でも勝つのは難しくなるので、特に流れが悪いときは常に場の動物に目を光らせて、シビアに動物を選んでいくことが重要になると思う。

タイミングは違っても、お金があるからこそその使い道が大事なのはシルバー湖と同じ。アイスクリーム屋の場合は中盤から終盤にかけてなので拡大再生産への影響はあまりないが、周囲と比べてお金を使いきれずに溜まっていってしまうと不利になる。

なまじ終盤の加速力のあるアイスクリーム屋だからこそ、下手にゆっくりしてしまわないように要注意!まだかかりそうに見えてもあと5手で終わるといった場面もしばしばあるので、終盤に差し掛かったら得点と手順を考えて詰め将棋のように最適手を導き出し、一気に勝負を決めにいくとよい。


ハリウッド・ヒルズ

ハリウッド・ヒルズ.png

とくちゃん評価:B-

上級マップの中で唯一、後援者方面に特殊能力を持つマップ。後援者を出しやすくて楽しそう(著者は初プレイでこのマップを選択した)・・なのだが、強さに関しては正直に言って厳しく、上級マップの中では最低の B- にランク付けしている。(Cクラスにしなかったのは、一応運に恵まれればまれに上回れる程度の差ではあるため。)

メインの能力である H の配置ボーナスの効果がランダムドローなのがまずきつい。後援者カードの中には活かせる状況やタイミングが限定的なものも多く、序盤だとそもそも条件を満たしていなくて出せないカードすらある。むしろハズレのほうが多くなるくらいで、とても安定して拡大再生産や得点アップに貢献してくれるとは言いがたい。

そうなると、運ではなく確実な資源である5金ボーナスを優先したくなるが、5金ボーナスはマップ右上の1ヶ所しかなく、これでは資金力も最低レベルの状態。(他の7つの上級マップはどれも、5金ボーナスが2ヶ所あるか、お金に関わる固有能力を有しているかのどちらかである。)

評判の範囲内からカードを拾えるボーナスも、他のマップには軒並み2~3ヶ所あるのに対してハリウッド・ヒルズは1ヶ所しかない。しかも5金ボーナスの近くにあり、ここから建設を始めると後々のおいしいタイミングまで取っておくのも困難。

加えて、水域と岩の隣接も、水域は上部、岩は下部と完全に分かれていて、柔軟性がない。Hマスはすべて岩周辺にあるので、上部の5金スペースやX-トークンから建設を始めるとHマスへの到達は遅れ気味になるし、Hマスを埋めきったあとの終盤に至っては岩隣接の確保が難しくなる。

Hマスを埋めきればいよいよ後援者を出しまくる体制が整うが、多くの場合その頃にはもう動物や保全計画のほうが得点を稼ぎやすいフェーズに入っており、一部の高得点を得られる後援者を除いては非効率な手になってしまう。それでも後援者にこだわり続けるようなら、得点が伸びないうちにゲームを終わらせられてしまうことになるだろう。(後援者を並べた結果、トップとダブルスコアくらいの差がついているハリウッド・ヒルズを何度見たことか…)

だからといって、序盤から速攻でHマスを埋めにいくのは、ドローした後援者が手札上限に引っかかってしまう上、建設を重視することで動物方面の拡大再生産も遅れるから、あまり良い手とは言えない。

このように、ありとあらゆる項目で他のマップよりも劣っており、勝利を目指して戦うのは実力差でもない限り厳しいと思う。著者(とくちゃん:Tomoaki Tokunaga)のBGA結果でも、この記事を書いている時点でハリウッド・ヒルズは最速29ターンが1回のみで、それ以外はすべて30ターン以上かかってしまっている。実際、平均が29ターンを切っているSクラスの屋外区域との戦力差を見積もってみると、ハリウッド・ヒルズは10回対戦して1回しか勝てない計算になった次第である。

不運は序盤よりもゲームがある程度進んでから発生したほうがまだ被害は少ないから、Hマスは後回しにして5金スペースから入ったほうが安定だとは思うが、無難に行っても弱いならスタートからHマスで良い後援者カードを引けるのに賭けるのもありかもしれない。失敗すると相当不利だが、Sクラスの序盤系後援者を引けると一転勝ち目も出てくると思われるので、特に強い相手と対戦するときは一考に値する。

最後に、これまで述べてきたこととは反対かもしれないが、結局のところどうしようもない部分もあるので、ハリウッド・ヒルズをやるときはハンデを背負ってるくらいのつもりで気軽に楽しくプレイすることをお勧めする。

もしかすると、ハリウッド・ヒルズはロマンを追い求めるための枠として設計されたのかもしれない。運に期待するのも一つのゲームの楽しみ方ではあるし、実際それでうまくいって勝つ場合もあるだろうから……


追記:

BGAで対戦したエキスパートの ylathor さんという方が、ハリウッド・ヒルズをとても上手に回されていたので紹介しておきたい。30ターン133点という強力な結果を出され、負けるに至った。

https://boardgamearena.com/table?table=439177342

手札枚数+2の大学から入り、カードの受け皿を確保した上で速攻で(2ラウンドには)Hマスを埋めにいくルート。アクションカードは建設とともに後援者を早期に改良し、時には2枚出しをしたり効率的にどんどん後援者を出していく。

科学図書館科学博物館科学実験所のコンボなので引きに恵まれた面もあったとは思うが、ここまで完璧に噛み合わなくても高確率で勝てる程度の差はつけていると思うので、ハリウッド・ヒルズの可能性を感じさせる結果ではないだろうか。

ylathor さん曰く、ハリウッド・ヒルズも非常に強力な場合があるとのこと。


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